1 概要
はくちょう座の深部、約2,000光年の距離に位置する、コンパクトながら猛烈なエネルギーを秘めた驚異的な散光星雲(星形成領域)です。
| 項目 | Sh2-106 |
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| 別名 | |
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| 分類 | 散光星雲 |
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| 星座 | はくちょう (Cyg) |
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| 等級 | 8 |
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| 視直径 | 5' |
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| 距離(光年) | 2000 |
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| 赤経 / 赤緯 | 20h 23m / +37° 4’ |
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その中央には、太陽の約15倍もの質量を持つ生まれたばかりの超巨星「IRS 4」が潜んでいます。この若き主星の周囲を取り巻く濃密な塵の円盤(ダークレーン)が赤道方向への光を遮り、南北の両極方向へと砂時計のように激しくガスが噴き出した結果、この特徴的な「双極性(バイポーラ)星雲」が形成されました。宇宙の暗闇に真っ白な一対の翼を広げたようなその神々しいシルエットから、「天空の雪の天使」というあまりにも美しい愛称で世界中の天文ファンから親しまれています。
2 位置と探しかた
はくちょう座の十字の交点に輝く2等星サドル(ガンマ星)のすぐ近く、星々が激しくひしめき合う天の川の主脈のなかに位置しています。
位置自体はサドルの東側(約2度先)にあり、広大な散光星雲「IC1318」の濃密な赤色のベールの中に埋もれるように配置されています。非常に小さな天体(視直径は約3分)であるため、視野の広いファインダーで直接その姿を見つけることは困難であり、正確な自動導入(GoTo)や、周囲の微星をガイドにした高倍率での慎重なアプローチが必要となります。
3 シーズンとアドバイス
見頃は、8月から10月。はくちょう座が天頂付近の最も高い高度をキープする時期が、大気による像の肥大化(シーイングの悪化)を最小限に抑え、天使の羽の極細のフィラメント構造を1ピクセル単位でシャープに解像させる最大のチャンスです。その小ささゆえに、並大抵のシーイングやガイドエラーがあると、せっかくの天使の構造がブレてただの丸い光のシミになってしまいます。じっくりと短時間露出のコマを大量に重ねる、あるいはラッキーイメージングの手法を取り入れて、最も尖ったシャープな瞬間の光を厳選してコンポジットし、画像処理時に星の自己主張を適度に抑え込んであげることで、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が捉えた世界を彷彿とさせる、重厚で洗練された宇宙のアートを自らの手で描き出すことができます。
4 観測の難易度
全光度は約10等前後と暗く、サイズも極めてミニマムなため、眼視での観測は最高峰の難易度を誇る完全な写真向け・長焦点クローズアップ推奨の天体です。
眼視での見え方:
小型望遠鏡では、周囲のまばゆい天の川の星々に目が眩んでしまい、存在を確認することすらできません。口径25cmクラスの大口径望遠鏡を使い、シーイング(大気の安定度)が良い夜に高倍率まで攻め込んで、ようやく中央が暗黒帯で分断された、小さな一対の光の羽が、かすかな光のベールとして視野のなかに浮かび上がってくるレベルです。しかし、デジタル一眼レフや冷却CMOSカメラのセンサーを通すことで、眼視の限界を遥かに超えたドラマチックな色彩の饗宴が姿を現します。
5 天体撮影・画像処理のポイント
写真向けの対象としては、天使の翼の内部にのたうつ繊維状(フィラメント)の微細な構造と、中央の主星周辺の激しい明暗のコントラストが素晴らしく、撮影者の光学系と画像処理の技術がストレートに試される珠玉の好対象です。
王道の構図:
非常に小ぶりな天体であるため、1000mmから2000mmを超える超長焦点望遠鏡(シュミットカセグレンやリッチー・クレチアンなど)による一発大クローズアップが至高の王道構図とされています。画面中央に天使の翼を堂々と配し、背景の宇宙塵を限界まで引き締めることで、星雲のシャープな造形を際立たせます。
Glossy(艶)な画像処理の極意:
Sh2-106は、中心星の光を反射して青白く輝く反射星雲の成分と、水素ガス自体が励起されて真紅に放電する発光星雲の成分が、極めて狭い領域のなかで激しく混ざり合っています。画像処理の際は、ナローバンド(HαやOIII)のデータをブレンドしつつ、中央の暗黒帯(砂時計のくびれ部分)のシャドウを劇的に残しながら、翼の先端へ向かって薄れゆくガスのグラデーションをみずみずしく引き出すのがポイントです。
背景の光害カブリをフラット処理で完璧なフラット処理でシャットアウトし、翼の表面にシルクやガラス細工のような、透明感に満ちた艶やかなクラスター(光沢)を纏わせることで、真っ黒な宇宙空間のなかから、天使の翼が圧倒的な立体感とスピード感を持って目の前に飛び出してくるような芸術的な作品へと仕上がります。