1. 概要
Barnard 143(B143)は、わし座の方向、約2,000光年の距離にある非常に有名で特徴的な暗黒星雲です。天の川の濃密な星の海をバックに、手前にある冷たいチリとガスの雲が背景の光を完全に遮断することで、まるでギリシャ文字の「ξ(クシー)」をそのまま夜空に描いたような漆黒のシルエットが浮かび上がります。すぐ隣にあるB142という別の暗黒星雲と合わせて、海外ではEの字星雲(E-Nebula)としても広く親しまれており、天の川の輝きを型抜く宇宙の遮光物質として絶大な人気を誇る撮影対象です。
| 項目 | B143 |
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| 別名 | |
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| 分類 | 暗黒星雲 |
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| 星座 | わし (Aql) |
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| 等級 | |
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| 視直径 | 90' |
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| 距離(光年) | 2000 |
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| 赤経 / 赤緯 | 19h 41m / +10° 0’ |
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2. 位置と探しかた
B143は、夏の大三角の一角をなすわし座の1等星アルタイル(彦星)のすぐ近くに位置しています。アルタイルからわずか北西に約3度(満月約6個分)ほど進んだ場所にあり、これほど有名で明るい主星を目印にできるため位置の特定に迷うことはありません。夏から秋にかけて天頂付近の非常に高い高度を通過するため、大気の影響を最小限に抑えた最良の条件で視野へ捉えることができます。
3. シーズンと撮影好機
撮影に適した時期や時間帯を調べるシュミレーターです。天体が最も高く昇る南中時刻をはじめ、夜の暗さ(天文薄明)、撮影に適した高度、月明かりの影響(月齢・月の出入)を自動算出しています。遠征計画の参考にしてください。
B143は、夏から秋にかけてが最高の撮影シーズンとなり、国内から観測すると南中時には天頂付近の素晴らしい高高度まで昇りつめます。このシミュレーションで十分な高度が確保できる時間帯を確認し、背景のスタークラウドと暗黒星雲の圧倒的なコントラストを描き出すために、月明かりの影響が全くない新月期を厳選して遠征計画を立ててください。
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★ 見易いシーズンは、7から9月頃
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| 写真に最適 |
0時に南中 |
7月中旬 |
| 観望に最適 |
に南中 |
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★ 今夜の観測タイミング |
| 観測夜 |
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| 観測地 |
( 緯度 35.69,経度 139.69 )
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18
20
22
0
2
4
6
20:04
◆
19:23
23:17
3時間54分
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◆南中高度 64.2°
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月齢 28
(3%)
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4. 天体の特徴と見え方
B143の最大の特徴は、天の川の無数の星々を背後から覆い隠す、文字通り漆黒の遮光構造にあります。暗黒星雲は写真向けの対象になりがちですが、この天体は例外的に眼視でもそのシルエットを楽しめる数少ない存在です。
眼視観測においては、光害のない完璧な漆黒の空が必須条件となりますが、最高の環境で視野の広い双眼鏡や低倍率の望遠鏡を向けると驚くべき体験が待っています。密集する背景の星々がそこだけぽっかりと黒くξの形に抜け落ちており、宇宙の奥行きと遮光物質の存在を生の眼でハッキリと認識することができます。
5. 天体撮影・画像処理のノウハウ
写真向けの対象としては、夏の濃厚なスタークラウドの輝きと、それに型抜かれた漆黒のξのコントラストを極限まで引き出すのが最大のテーマです。フルサイズカメラであれば焦点距離300mmから500mmクラスのシステムを使用することで、B143とすぐ南に寄り添うB142(Cの字型)を同時にバランスよく収めることができます。2つが合わさることで、宇宙に巨大なアルファベットのEが浮かび上がる、最高にユニークでストーリー性あふれる広域構図になります。
画像処理の際は、背景を丁寧なフラット処理で完璧に均一化し、背景にひしめく無数の微星を滑らかにあぶり出します。暗黒星雲は純粋な連続光(RGB)の勝負になるため、ナローバンドフィルターに頼らずに輝度と色彩を制御する必要があります。主役であるξの内部は、ただ真っ黒に潰すのではなく、チリの濃淡をわずかに残すように階調を絶妙にコントロールします。これにより、背景のスタークラウドが黄金色に煌めく美しい luster(光沢)を放ち、手前の暗黒星雲がまるで高級な黒ベルベットのような艶消しの立体感を持って浮き上がってきます。画面全体に上品な透明感を宿らせ、Glossy(艶)で宇宙の底知れない奥行きを表現した極上の1枚に仕上げることができます。
撮影のアドバイスとして、淡い分子雲の境界線や暗黒帯の微細な濃淡を描き出すためには、ノイズの少ない綺麗なRAWデータをたくさん重ねてS/N比を限界まで高めることが成功の鍵です。シーイングが安定し地球の大気が最も薄くなる高高度の時間帯を贅沢に使い、ピントを極限までシビアに追い込んで撮影してみてください。