夜空に浮かぶその文字は、誰が書いたのか。星々の海に、まるで宇宙がそっと残したサインのように“S”が浮かんでいました。

この“S”の正体は、へびつかい座に潜む暗黒星雲 Barnard 72。通称「スネーク星雲」。天の川の密集地帯に、黒いインクで走り書きされたような形が浮かび上がります。

現場に残されたイニシャルは「S」



ところで暗黒星雲って、「星が無い場所」「宇宙の穴みたいなもの」と思っている人、意外と多いんですよね。

でも実際はその逆で、星が“ありすぎる”場所に、濃いガスと塵が手前にあって光を遮っているだけ。
背景の星が多いほど、暗黒星雲はくっきりと“文字”のように浮かび上がります。宇宙の影絵みたいなものです。

今回の“S”も、まさにその典型。星の海を背景に、手前のガスが筆で描いたような形を作っているのです。

暗黒星雲の世界には、他にも“文字”や“記号”のような形がたくさんあります。
例えば、へびつかい座には ξ(クシー)暗黒星雲 と呼ばれる、まるでギリシャ文字のような形をした暗黒星雲があります。南天には インクスポット星雲 という、宇宙にこぼれた墨汁のような黒い染みもあります。どれも「暗黒星雲=星が無い場所」という誤解をひっくり返す存在です。

私が撮影した宇宙が残した静かなサイン“S”。次にこの文字を見つけるのは、あなたかもしれません。

Barnard72についての詳しい情報や 撮影データ、画像処理については下記を見てください。
Barnard 72(スネーク星雲)写真ページ