先日掲載した「北アメリカ星雲からサドル、クレセント星雲」では、135mmの広い画角で、はくちょう座に広がる壮大な星雲群をご紹介しました。その写真の右下に小さく写っていたのが、今回の主役 クレセント星雲(NGC6888) です。

広視野では一つの小さな星雲だったクレセントも、近づいてみると、その周囲には驚くほど広大な宇宙が広がっています。

クレセント星雲と広がる分子雲

クレセント星雲といえば、明るく輝く三日月形の星雲を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、その本当の魅力は、星雲本体だけではありません。Hαで輝くオレンジ色のガスを、淡い青いOⅢのベールがふんわりと包み込み、そのさらに外側には複雑に入り組んだガスや分子雲がどこまでも広がっています。

今回は、その淡いベールや背景の分子雲まで描きたくて、OⅢの露光時間をHαやSⅡより少し長めに確保してみました。派手な色合いを目指すのではなく、柔らかな広がりや奥行き、そしてクレセント星雲が広大な宇宙の一部であることを感じられる一枚を目標に仕上げています。

こちらは、クレセント星雲を拡大したものです。
クレセント星雲と広がる分子雲


クレセント星雲は、中心にあるウォルフ・ライエ星(WR136)が吹き出す猛烈な恒星風によって形作られた星雲です。現在の恒星風が、過去に放出されたガスへ衝突することで衝撃波が生まれ、複雑なフィラメントや殻状の構造が作られています。写真に写る繊細な筋模様は、まさにその宇宙規模の衝撃波が刻んだ痕跡なのです。

広視野では「はくちょう座に浮かぶ小さな星雲」の一つだったクレセント星雲も、こうして近づいてみると、その周囲には想像以上に豊かな宇宙が広がっていました。同じ夜に撮影した広視野写真と見比べていただくと、宇宙のスケールの大きさをより感じていただけるのではないでしょうか。


クレセント星雲の見える場所、時期、詳細情報等については、こちらのページを参照ください。


にしても最近のCMOSカメラ、本当によく写ります。昔は「三日月」に見えることでクレセント星雲と呼ばれてましたが、ここまで細部が写ると、もはやクルミなのか、脳みそなのか……(笑)。皆さんには、何に見えますか?